■2.3 人的資源管理の概要

 

(青本P51)

総合技術監理を行う技術者に要求される人的資源の管理技術は、労働関係の法体系を遵守しつつ、より良い労務管理を実現するための技術及び人的資源の最適な活用とその継続的な能力開発を促すための技術

総合技術監理では、生産の4Mである人的資源を最も重要な経営資源と位置づけています。この資源を有効に活用するためには、従業員の持っている能力を大いに発揮できる状況をつくることと、可能性のある能力を開発することであり、そのための組織マネジメントが人的資源管理です。

これは、総合技術監理技術者が経営的な視点で、人権、精神面、業務へのモチベーションの維持向上をベースにして考える必要があるからです。そのために、人の行動モデル、組織論や労働関係法令、人事考査、教育・訓練などの個別管理技術を理解する必要があります。

 

表 人的資源管理の概念

人的資源管理

人の行動モデル

組織運営理論

インセンティブ(動機付け)

組織論

組織形態

組織文化

リーダーシップ

労働関係法

労務管理

労働関係法

労働時間管理

賃金管理

労使関係管理

人的資源計画

職務分析と職務設計

雇用管理

従業員区分

人的資源開発

人的資源管理のプロセス

人事考課管理

教育・訓練

 

1.行動モデルと動機づけ

人的資源の参加意識を高めることは、組織力を向上することに上で重要な事項で、人の行動モデルを考慮した企業活動が、最近積極的に行われています。行動モデルを考え動機づけを行う理論としては、2つの理論があります。第一は基礎論的理論であり、第二は実践論的理論です。

1)基礎論的理論

基礎論的理論には、マズローの欲求5段階説や組織均衡論、欲求待理論、ハーズバーグの動機づけ理論などがあります。

マズローの欲求5段階説は、米国の心理学者アブラハム・マズローが提唱した理論であり、人間の欲求や動機を次の5つの階層で捉えて、その頂点に自己実現があるという考え方です。

@生理的欲求(飲食や睡眠に村する欲求)

A安全・安定への欲求(身体危険や経済不安を免れたいという欲求)

B社会欲求(友人との友好関係や愛情への欲求)

C尊厳欲求(地位などへの欲求)

D自己実現欲求(創造的な活動などを成し遂げたいという欲求)

このように、下位の欲求が満たされたときに、人は次の欲求に対して努力をしていくというものです。また、欲求期待理論では、人間は次の2つの結果が得られれば、さらに成長したいという動機を持つという理論です。

成功願望:自分の努力が成功裏に終わるものと、いつも期待している。

報酬願望:自分の成功が報酬に結びつくものと信じている。

このように、基礎論的理論は、個人がどのような場合に組織に参加するのか、組織はどのように存在できるのかを述べたものです。

2)実践論的理論

実践論的理論には、人間関係アプローチや、人間資源アプローチ、マクレガーのX理論とY理論などがあります。マクレガーがこの理論を出した1957年では、その主な対象がブルーカラーであり、X理論が重要視されていました。しかし、現代社会では、Y理論を前提にした組織運営を考える必要があると考えられています。

実践論的理論は、個人はより大きい満足を求めて組織に参加すると考えて作られる理論で、総合技術監理の基礎知識としては理解しておくべき理論です。

3)インセンティブ

人々の労働意欲や達成意欲、協調意欲を引き出す源泉がインセンティブで、インセンティブを与えることによって個人の欲求を満たし、個人をそれぞれの仕事により積極的に取り組むように仕向けることができます。インセンティブとして、@物質的インセンティブ、A評価的インセンティブ、B人的インセンティブ、C理念的インセンティブ、D理念的インセンティブの5つは重要です。

4)組織論

組織論は、社会経済活動の変化とともに進化をしてきた理論です。かつては社会経済活動も緩やかで、ブルーカラーを中心とした組織が多かったために、固定的で単一な組織が一般的でした。しかし、最近の社会経済活動の国際化、複雑化、高度化などによって、組織にも柔軟性が求められるようになっています。職能別組織から、事業部制やマトリックス型組織、プロジェクト型組織など組織の多様化が進んでいます。組織文化や組織文化の様式については理解しておく必要があります。

5)リーダーシップ

最近では組織の柔軟性と個人の能力を発揮する仕組みが重要となっていますので、それを実現できる組織形態が望ましく、個人のリーダーシップも期待されており、地位とはリンクしない形でのリーダー選びも実施されています。

2.労働関係法

人的資源管理における特徴の1つは、多くの労働関係法の制約を受けることです。本来、この法律は労働者の健康や安全を守るために制定されていますので、それに従ったシステムを構築し、適切な労使関係を築き、労働時間管理や賃金管理等が実施される必要があります。

これらの基本的な法的要求事項は、総合技術監理を勉強する中で、必ず知っておかなければならないことです。ここで、対象とされている労働関係法や労働時間管理、賃金管理、労使関係管理の内容は五肢択一式問題を作成しやすい事項ですので、青本以外で情報を集め、確実に勉強をしておく必要があります。

3.人的資源計画

人的資源は、必要な時にタイムリーに動員されるのが理想です。しかし、人材の流動化が進んできた現在では、優秀な人材が必ずしも定着してくれるとは限りませんし、必要な資質を待った人材が豊富にいるわけでもありません。このような社会構造の変化から、最近では新卒の定期採用だけでは組織の維持ができなくなり、中途採用の定常化、通年採用活動やアウトソーシングとして派遣社員の積極的活用も図られています。そのため契約関係も一様でなく、雇用管理は複雑化してきています。

そのような動きを踏まえて、人的資源計画は、必要な時期に適切な能力を待った人的資源を確実に確保するように行わなければなりません。その点では、総合技術監理を行う上で非常に重要な事項となっています。

4.人的資源開発(教育・訓練と人事考課)

ビジネスの形態は、社会変革と技術変革の相乗効果で大きく変貌してきています。必要とされる技術も高度化し、必要な能力を持つ人材を常に組織として確保していくためには、教育・訓練は欠かせない重要事項です。しかし、業務内容が大きく変化してきていますので、既存の社内教育システムでは十分な機能を有していなくなりつつあり、教育・訓練の専門会社に委託することが増えています。

近年、大学教育の内容低下が指摘され、日本の大学教育レベルは国際的には非常に低い評価にとどまっています。これを背景にJABEE(日本技術者教育認定機構)による認定制度も開始されようとしています。

また、事業組織内における教育・訓練制度の重要性は高まってきているといえ、それが適切に機能していくためにも、人事考課制度の充実と的確な運営が重要です。